三谷幸喜『日本の歴史』は野心的な攻めてるミュージカル:長身の香取慎吾は舞台で映える

コロナ禍の日本での遠征はとんでもないので、配信で見ました。

私は三谷さんの舞台を見るのははじめてで、SMAP、っていうか香取さんが出ていない三谷作品で見ているのはとても限られているんだけど、シュワルツ家(シュミット?)とオブライエン家の盛衰をめぐる長編の物語は古典的だけど、作品全体としては知名度のあるベテランの脚本家、演出家である三谷さんの作品としては私には「攻めてる」、新進気鋭の脚本家が「攻めて」作る舞台のノリがあったように思えました。

三谷幸喜といえば私の頭にぱっと浮かぶイメージはコメディーだけど、この作品はシュワルツ家、オブライエン家の歴史とシンクロさせて非業の死を遂げた悲劇のヒーロー、知名度のない歴史的人物に光を当てて、且つ前衛的な三谷流のコメディー仕様の演出なのですが、作品の内容は驚くほどシリアス。人々が死んでいっても「明日はある」というメッセージは発信していますが、この舞台は基本的に「悲劇」の物語、この作品が人の心を打つのはコメディーの部分ではなくて、数々の悲劇。

また、こういう作品は、限られた人数の人がお金を出して見に行く舞台だからできることで、テレビドラマや映画など「一般受け」しないと採算が取れない媒体ではできないよなあ、というのが見終わった後の感想。つまり多くのハリウッド映画や日本の連ドラなんかがそうですが、いわゆる「feel good」、見て気持ちがスッキリする、幸せになるお話ではありません。

ということは見る人にいろいろ考え込ませてしまう、深い作品であるということ。

言い換えれば、見る人を選ぶ作品だということです。

日本の、いや世界の舞台芸術の分野が発展していくためにはこういう「攻めた」作品は、興行収入の面からは数多く制作していくのは難しいでしょうけど、頑張って欲しい、というのが私の感想です。
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そして、この舞台で香取慎吾は輝いていました。

どうして三谷さんが俳優としての香取さんに好意的なのかむちゃくちゃよくわかった!

こんなこと言ったら軽薄な女と思われるかもしれないけど(w)「見た目がいい」のよ!

まず長身、あと顔が小さくまとまった綺麗な顔「じゃなくて」オーラを発するダイナミックなイケメン、さらに30年SMAPやって培った「見せ方」のうまさ。さらに男らしくてちょっとだけ鼻にかかった感じ?(英語で「nasal」)の素敵な声!

香取さん、歌もお芝居もお上手だし、踊りは小学生の頃からジャニーズで鍛えられているプロだけど、三谷さんが香取さんを舞台役者として使いたがるのは上で言っているように「舞台映え」が圧巻だからだと思います。

『日本の歴史』の前評判では香取さんが義経にキャストされていたことがSMAPの悲劇とも重なって話題になっていましたが、実際に見て香取さんがむちゃくちゃ輝いていたのは明治維新の時、薩長軍と協力して活躍した赤報隊隊長の相楽総三役の時、さらに、この舞台の最後の方で展開されるオブライエン家の三男のアントニオ(トーニャ)のソロの歌、ダンス、独白など。もう輝くようなオーラがあって素晴らしい。こういうのってどんなにイケメンでどんなにお芝居が上手でも他の俳優さんは容易にこの雰囲気は出せない。SMAPはどのメンバーでもそうだけど彼らはホントに「唯一無二」だと思います。

今回相楽総三をウィキペディアで検索したけど、三谷さんは最初は新撰組でなくて相楽総三を主役にして大河ドラマをやりたかったそう。でもあまりにも無名で地味な人だから却下されて新撰組になったのですね。

もちろん舞台は他のキャストも全て素晴らしかったです、やっぱりベテランのシルビア・グラブさん、中井貴一さんのお芝居には光るものがあったとは思いますが。

配信で見ても心を打つ舞台だったので、生で見た迫力は相当のものだったでしょう。

舞台は多くの方にとってはチケットが高額ですし、若くて舞台に行き慣れてない方には敷居が高いのかもしれませんが、コロナ禍が終わったらたまには生の舞台を見に行って欲しいです。

私は年齢的に今ほど仕事が忙しくなくてもうちょっと体力があった時期をアメリカで過ごしたので日本の小劇場の演劇などあまり見ていないのが残念。アメリカのブロードウェイのミュージカルやお芝居は見る機会はそこそこあったのですが。

SMAPメンバーの舞台は数が少ないし、チケットをゲットするのも大変ですが、歌舞伎でも宝塚でもその他の舞台やミュージカルでも機会があったらぜひ生で見られることを強くお勧めしたいです。

Yumey

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